2026年10月28日、医学誌『ランセット』の国際研究プロジェクト「ランセット・カウントダウン」が、気候変動と健康に関する第10回年次報告書を発表しました。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)が主導し、世界保健機関(WHO)と戦略的に連携して作成されたこの報告書には、100以上の機関から146人の専門家が参加。気候変動が「すでに世界のあらゆる地域で健康を損なっている」として、これを正式に世界的な「健康上の緊急事態」として認めるよう訴えています。11月にトルコ・アンタルヤで開催されるCOP31を前にした発表で、健康を気候政策の中心に据えるべきだという強いメッセージが込められています。
熱関連死が過去最多の71万人に
報告書によると、2023年の熱関連死は71万人に達し、これまでの調査で最多を記録しました。その7割以上が人為的な気候変動に起因すると分析されています。パリ協定発効後の10年間の年間平均死者数は、その前の10年間と比べて約36%増加しており、特に体温調節機能が低下しやすい85歳以上の高齢者や、冷房へのアクセスが乏しい屋外労働者(農業・建設業など)が、リスクの高いグループとして挙げられています。
経済的な打撃も拡大
健康への影響だけでなく、経済的な損失も見過ごせません。熱による労働生産性の低下などから生じる所得損失は、2025年時点で1兆ドルを超えると推計されています。干ばつの深刻化も進み、世界の陸地のほぼ半分が、少なくとも1か月間の極端な干ばつに見舞われたとされています。
明るい材料も:クリーンエネルギーと早期警戒システム
一方で、報告書は前向きな動きも紹介しています。2025年の世界のクリーンエネルギー投資は過去最高の2.1兆ドルに達しました。また、化石燃料由来の大気汚染を減らした国では、年間数千人規模の早期死亡を防いでいると推計されています。各国で気候情報に基づく早期警戒システムや健康適応計画の導入も進んでおり、WHOの専門家は「クリーンエネルギーや医療体制の強化、早期警戒システムは、今まさに命を救っている」「気候対策そのものが健康への介入だ」と強調しています。
私たちの暮らしでできること
専門家が各国政府に求めているのは、温室効果ガス排出削減の加速や、適応策・医療体制への投資拡大です。それと同時に、私たち一人ひとりの日常生活の中でも、熱から身を守るためにできることがあります。
- 高齢の家族や近所で一人暮らしをしている方に、猛暑日はこまめに声をかける
- 屋外での作業や運動は、気温が上がる前の早朝や、日が落ちてからの時間帯に移す
- のどの渇きを感じる前に水分補給をし、エアコンや扇風機を我慢せずに使う
- 自治体や気象庁が発信する熱中症警戒情報・気象情報を日常的に確認する習慣をつける
こうした小さな行動の積み重ねが、報告書が指摘する「リスクの高い人たち」を守る力になります。
まとめ
2026年のランセット・カウントダウン報告書は、気候変動がもはや将来のリスクではなく、今この瞬間の健康上の緊急事態であることを、具体的な数字で突きつけています。11月のCOP31では、このデータがどう政策に反映されるのかが注目されます。私たちもニュースとして読むだけでなく、自分や家族の暮らしの中でできる備えを一つずつ重ねていきたいところです。


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