「運動する時間がない」「睡眠時間を削ってでもやることがある」——そんな日々を送っている人にこそ知ってほしい研究結果があります。イギリスの大規模データベース「UKバイオバンク」に登録された5万9,078人(年齢中央値64歳)を約8年間追跡した研究で、運動・睡眠・食事のほんのわずかな改善を組み合わせるだけで、寿命と健康寿命が大きく延びる可能性が示されました。今日からできる小さな習慣の話です。
もっとも効果が大きかったのは「運動」
この研究でまず示されたのは、寿命と健康寿命にもっとも強く関係していたのが運動だったという点です。1日あたり約22分の中高強度の運動(早歩きや軽いジョギングなど、少し息が上がる程度の運動)から効果がはっきり現れ始め、寿命の延伸効果は1日50分ほどで頭打ちになりました。一方、健康寿命(介護を必要とせず自立して過ごせる期間)は1日75分の運動でピークに達し、最大で約10年延びるという結果も出ています。
「毎日1時間以上運動する」と聞くとハードルが高く感じますが、22分は駅までの早歩きや、家事を少しきびきびこなす程度でも届く時間です。「効果が出始めるライン」が思ったより低いというのは、続ける上で心強いポイントだと思います。
睡眠・食事の「わずかな改善」を組み合わせる効果
単独の効果としては運動がもっとも大きかったものの、この研究で特に注目したいのは「3つを同時に少しずつ改善すること」の効率の良さです。もともと生活習慣スコアが低かった人が、
- 睡眠時間を1日5分増やす
- 運動時間を1日1.9分増やす
- 食事の質のスコアを5点改善する
という、それぞれ単体で見ればごくわずかな変化を積み重ねただけで、約1年の寿命延伸につながると推定されています。1つの習慣を極端に頑張るより、複数の習慣を少しずつ底上げするほうが、コストパフォーマンスが良いということです。
なお、この研究では食事の効果が運動や睡眠に比べて小さく測定されていますが、これは食事内容の調査方法が比較的粗かったことが影響している可能性がある、と論文では指摘されています。食事の重要性そのものが否定されたわけではない点には注意が必要です。
3つが揃うと差は「9年」を超える
もっとも印象的なのは、3つの要素すべてが良好なグループと、すべてが不良なグループを比較した結果です。「運動量が多く、睡眠が適切で、食事の質も高い」グループは、もっとも条件の悪いグループと比べて、約9.35年も寿命が長いという差が確認されました。1つの習慣だけでは届かない差が、3つが揃うことで生まれてくるというのが、この研究の一番のメッセージだと感じます。
今日からできること
いきなり生活を大きく変える必要はありません。この研究が教えてくれるのは、むしろ「小さな改善を3方向から積み重ねる」ことの価値です。
- 通勤や買い物のときに、いつもより少し早足で歩いてみる
- 就寝時間を5分だけ早める、あるいはスマホを見る時間を5分減らす
- 野菜をひと皿追加する、間食を少し栄養価の高いものに替える
こうした「ちょっとした積み重ね」を運動・睡眠・食事の3方向で同時に意識するだけで、数年単位の差につながる可能性があるというのは、忙しい毎日を送る人にとって大きな励みになるのではないでしょうか。
まとめ
UKバイオバンクの5.9万人を対象にした約8年間の追跡調査から見えてきたのは、運動がもっとも寿命への影響が大きい要因であること、そして運動・睡眠・食事をそれぞれ少しずつ改善するだけでも約1年、3つすべてが良好な状態が揃えば約9.35年もの差につながりうるということでした。完璧を目指すより、「今日より少しだけ良い習慣」を運動・睡眠・食事の3方向で積み重ねていくことが、遠回りに見えて実は一番効果的なのかもしれません。


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